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<前編>変わるファッションの構造 ”正直者”が最大の戦略になる。【木村昌史×軍地彩弓】(un)TRENDイベントレポート


トレンドを作ることが正解だったファッション業界と、トレンドに乗ることが正解だった消費者。

「消費を煽るトレンドサイクルはいらないのではないか」。

押し付けられた流行から解放されるために、これからのファッションのあり方を考えるイベント、「(un)TREND(アントレンド)」が、3月10,11日、原宿で開催されました。

「トレンドにとらわれないものづくり」や「トレンドに惑わされない買い物」を共有するため、10YC、EVERY DENIM、ALL YOURSの3ブランドの出店や、レベッカブティックの赤澤える、High(er)マガジン編集長haru.らが登壇し、それぞれの思いを語りました。

その中で、スペシャルゲストとして軍地彩弓が登壇し、ALL YOURS 木村昌史氏と「ファッションのこれから」について対談を行いました。

gumi-gumi webでは、その様子をレポートします。

<前編>

木村:軍地さんは、CAMPFIREというクラウドファンディングの会社で顧問をされているんですよね。

軍地:色々やっている仕事のうちの1つですね。去年の3月くらいに立ち上がった、CAMPFIREのファッション部門をサポートする「CLOSS(クロス)」で顧問をしています。

ファッションとは、長くブランドを続けるものだから、きちんと2年単位くらいで色々とバックアップしながらファンディングを手伝うべきということで、CLOSSが立ち上がりました。

木村:僕らは今、CAMPFIREで24ヶ月連続でクラウドファンディングをしていますが、その前に軍地さんから「あなたたちがやってること、いいね」と言ってくださって。

軍地:CLOSSで支援するブランドを選ぶプレゼンのときですね。たくさんのブランドから応募があった中、最終的に10社残ったんです。そのうちの1ブランドがALL YOURSでした。そこで木村さんと出会いました。かなり印象的なプレゼンでしたね。

木村:僕らの考え方として、洋服ってたくさんあるから、作らなくてもいいのではないかという仮説がありました。そこで、古着を活用して新しい事業をやりたいというプレゼンをさせてもらったんです。

軍地:木村さんが最初に、「僕たちは服を作らない」と言ったんですよね。それを聞いて面白い!と思いました。

私もちょうどその時期、お洋服を作りたいと言ってくれる若い学生やデザイナーの話をたくさん聞いていたのですが、彼らは今までと同じビジネスモデルでブランドを考えていて。

ファッション業界がずっと長らく続けている卸を基本としたビジネススキームの中で、「BEAMSやUNITED ARROWSに服を置きたいんです」と言ってくる子ばかりで。そこだけでは勝ち残れるブランドを作るのは難しいという思いが私の中にありました。

そんな中、木村さんが1ラックに収まるだけの服を出して、「服を作りません」と言ったのがすごく衝撃的でした。

木村:ファッション業界は、作っているものがどうかというより、ビジネスモデルが少し古いと感じていました。ヒエラルキーの中で、トップにトレンドがあり、そこをみんなが模倣していく。

そしてインターネットが時間と距離をぺしゃんこにしてしまい、どこよりも早く情報をとって服を作っていくZARAやH&Mのような大きいところも出てきて、そのゲームから抜け出さないと難しいなと思いました。

それに加えて、大手の小売店やセレクトショップがブランドをフックアップして育てられなくなったんですよね。

軍地:ある程度メジャーで、売れるものしか取り扱わなくなってくると、まだ価値が未知数な若いブランドを売り手が引っ張ってくる力がなくなっていきます。

だから、セレクトショップに行ってもだいたい同じブランドか、オリジナルというコンテンツになってしまいます。それだと、消費者はつまらない。

売れるトレンドを共有して、似たようなものを作るので、消費者からするとどこへ行っても同じもので刺激がない。そして新人デザイナーからすると入り込む余地がない。

こんな流れがあった中、木村さんにお会いして「こういう人を待ってた!」と思いました。だけど、CLOSSのプレゼン審査員の中でALL YOURSに票を入れたのは私だけだったのですが。(笑)

木村:軍地さんの1票だけでした。(笑)

軍地:だから、「私はこの人たちをきちんと支援するべきだ」とすごく暴れて(笑)、こういう人たちが業界を変えて行くんだということを訴えて、猛プッシュしました。

木村:軍地さんがプッシュしてくれたので、CAMPFIREで2年連続のプロジェクトを立ち上げました。

軍地:そこからは私たちの想像を超えたものすごい快進撃でした。もちろん私たちが一応バックアップするとは言っていたけど、ほぼ木村さんたちの自力ですよね。

木村:有難いことに、2回目のクラウドファンディングでは、国内のファッション分野で最高額を出しました。広告宣伝費もほとんどかけずに。

軍地:スマホができたことや、海外から始まって、クラウドファンディングの仕組みが生まれたりと、これはもう仕組みの変化ですよね。

そうすると、今までのようにマスメディアが主導だった時代から、個人と個人がスマホの中で情報が共有できるようになる。

大切なのは、どう人に伝わるかということ。一生懸命ブランドを作っても、伝え方ができてない人が多いと感じています。

ブランドをやっていればきっと誰かが見つけてくれると思わず、メディアとしても機能しているCAMPFIREを使ったりして伝えていくといいのかなと思います。

私もNewsPicksでピッカーをやっていますが、全然違うカテゴリーの方々にファッションについて伝えられるのは大きいです。

木村:軍地さんが以前、NewsPicksで僕たちについて書いてくださったんです。

軍地: NewsPickでファッションの未来予想を年初に書いています。今年は何を書こうかなと思ったとき、zozoやユニクロの動きも業界に大きな流れを作りますが、それよりも個人がエンパワーされたファッション業界の変化について書きたくて。

D2C(ダイレクトトゥコンシューマー)に紐づくALL YOURSと、動画コマースを展開するPinQulの2つを取り上げました。

D2Cとは、簡単にいうと、ダイレクトに一個人が作り手と繋がるビジネスモデルのことです。ALL YOURSの、ファンを作り、ファンからお金を集めて、その分だけものを作るという事例を取り上げました。

これが結構話題になりましたね。面白いのは、ファッションに疎い経済系の人たちなどにもファッションの話が伝わるというところです。その方々に、ファッションの売り方が変わっていく現状を伝えたかったのです。

木村:アメリカでは結構D2Cが盛り上がってますよね。

軍地:エバーレーンがいい例です。ちょうどこのあいだ、ファッションウィークでニューヨークに行ったとき、新しくオープンしたエバーレーンのお店も見てきました。

D2Cの基本は、ブランドスタートがウェブからなのですが、そのエバーレーンが、今はノリータというすごくオシャレな場所に実店舗を出していて。

アメリカで話題のエバーレーンは、「Transparent pricing(トランスペアリングプライシング)=透明性のある価格設定」とブランドを表現しています。どういうことかというと、みなさん、自分のお洋服がどれだけのコストがかかって作られているかあまり考えることはありませんよね。

例えば1枚5000円のTシャツは、材料費、労働賃金、運ぶための金額、税金などを全て含めて原価が決まります。そこに儲けをのせたのが、いわゆる上代とよばれる、お店で見る値段です。

だいたい同じような素材のTシャツでも、なぜこのブランドは1万円で、あっちは1000円なの?と皆さん思われることもありますよね。そこには例えばイメージ戦略の広告費だったり、ブランディングとしてお店にお金をかけたりして上積みされていきます。

エバーレーンは原価の内訳、それに対してどれだけの儲けをつけて販売しているのか、ということを公表した透明性がすごく話題になっています。

このように、D2Cの何がいいかというと、消費者が払わなくてよかったコストをできるだけ抑えているというところ。ALL YOURSもそうですね。

木村:あと、D2Cは業界のルールからはみだせるんです。決められたレールの中にいると、言ってはいけないことが出てくる。(笑)

軍地:原価ってね、本当は昔言っちゃいけないくらいタブーだったんですよね。(笑)

木村:でも、自分たちでお客さんとつながって、自分たちの責任で販売するという考え方をすると、ルールがなくなりますよね。

そうすると、クラウドファンディングでいくら売れていて、何人が買っていて、どのくらい支援してくれているのかが全部見えます。それがわかる数値をうちのウェブサイトでも全部公開しているんです。

軍地:実際にALL YOURSの服を着てファンになった人たちは、池尻のショールームにも集まれます。お子さんを連れてきたり、そこで開催されるイベントを楽しんだり、実際に試着会をしたり。

お客さんも、納得して服を買っているので、とにかくロスが少ない。

木村:無駄に多く作らなくていいことは、僕らが本当にやりたかったことです。大手に勤めていたとき、だんだんとゴミばかり作ってるなぁという感覚が生まれ始めて。去年の服と比べて、今年はこういうところが新しいと伝えるのがしんどくなってしまって。

軍地:私はファッションのトレンド情報を出し続ける仕事をしていますが、だいたい2年前くらいから、「今年のトレンドなんですか?」と聞かれるのが苦痛になってきています。

言ったことが流行らなかったりするんです。というのも、


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